よくわからない日本語 原子力災害の避難区域について PAZとは? UPZとは?

前回わかりやすい日本語に翻訳したものを紹介しましたが、ここでよくわからない日本語のPAZとUPZの説明を紹介しましょう。

 

まずPAZについて。

 

原子力防災基礎用語集:予防的防護措置を準備する区域(PAZ) より

 

予防的防護措置を準備する区域(PAZ)

PAZ(Precautionary Action Zone)とは、急速に進展する事故を考慮し、重篤な確定的影響等を回避するため、緊急事態区分に基づき、直ちに避難を実施するなど、放射性物質の環境への放出前の予防的防護措置(避難等)を準備する区域をいう。実用原子力発電所の場合、この区域の範囲のめやすは原子力施設から概ね5km」とされる。

 

おや?日本語では「放射性物質の放出前」となっていますね。

日本では放射性物質の放出前に必ず避難させてくれるとでも言うのでしょうか。

避難等の「等」に含みがありそうです。

 

そして「電事連」のサイトには記載なし(怒)!

 

次にUPZについて。

こちらは「原子力防災基礎用語集」には記載なし。

 

緊急時防護措置準備区域(UPZ) - 安全 | 電気事業連合会 より

緊急時防護措置準備区域(UPZ)Urgent Protectiv action planning Zone
国際原子力機関IAEA)が概念を示し、原子力施設からおおむね半径30kmの範囲防災対策を重点的に行う区域のこと。
政府は原子力施設等の防災指針において、原子力施設から半径8~10kmを防災対策を重点的に行う地域の範囲(Emergency Planning Zone)としてきたが、福島第一原子力発電所の事故を受け、UPZの考え方を導入した。UPZは、急速に事故の影響が広がることを踏まえ住民の避難や屋内退避を準備することに役立つ。

 

なんですか、これは!?

具体的に何をするエリアなのか全く記載がありません。

 

混乱しますので、電事連への怒り以外は忘れてください。

原子力災害の避難区域について知っていますか? PAZとは? UPZとは?

今回はEPZの2つの区域、PAZとUPZについて調べてみました。

 

前回と同じく、わかりやすい香港の原子力サイトを翻訳してみました。

DBCP-RADIATION AND NUCLEAR SAFETY-EMERGENCY PLANNING ZONE より

 

PAZ(中文では予防行動区域)とは?

PAZ(半径3~5キロ)とは、原発事故が起こった場合、放射性物質放出前または直後に、深刻な健康被害を防止または軽減するために、緊急防護行動をとり、防護措置を実施するエリアです(これらの施設での深刻な事故発生により大多数の早期死亡が想定)。

 

日本では一般的に即時避難区域と呼ばれていることが多いです。

でも、即時避難をする区域ではありません。

(モニタリングなどなしで)無条件に防護措置を実施する区域です。

即時防護措置区域とでもしたほうがわかりやすい気がします。

それにしても、早期死亡とはっきり書いてあるところがすごいです。

 

 

UPZ(中文では緊急防護行動計画区域)とは?

UPZ(半径5~30キロ)とは、速やかに避難が行われるように準備するエリアです。

環境モニタリングを実施し、モニタリング結果に基づいて、放射性物質放出後、数時間以内に緊急防護措置を実施します。

危機管理計画を制定し、それに則って、屋内退避や避難の実施、甲状腺ブロック剤の配布などを行います(もし必要な場合には)。

 

日本では一般的に避難準備区域と呼ばれていることが多いです。

この呼び方も誤解をまねきそうで心配です。

必ずしも避難をする区域ではありません。

こちらも防護措置計画区域とか防護措置準備区域などにしたほうがよい気がします。

 

もちろん、PAZにしろ、UPZにしろ、少しでも被ばくをさけるために30キロ圏外に避難するのが理想ではありますが・・・。

 

 

はい、私のつたない訳でも、よくわかりましたね!

 


 

追記:私が見つけた日本語の資料のなかでは、こちらの資料が英文の内容にいちばん近いのではないかと思います。参考のため、掲載しておきます。

発電用原子炉施設の災害時における予防的措置範囲(PAZ)の調査(内閣府受託報告書) (13/173ページ)より

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他の国のEPZについて

ご紹介している香港の原子力情報サイトに、他の国のEPZについて比較した記載がありました。

日本ではあまり見かけないものなので、ご紹介します。

DBCP-RADIATION AND NUCLEAR SAFETY-NUCLEAR EMERGENCY MANAGEMENT より

 

f:id:Mitsuki_z:20140228203917p:plain

 

2011年12月13日のものです。

IAEAの認識では、日本はUPZが8~10キロと定めてあるだけです。

推測でしかありませんが、日本でEPZと言われていたものが、IAEAではUPZという認識にしかならなかったのではないでしょうか。

当時日本にはPAZもUPZもなかったのかもしれません。

日本の基準がいかにいいかげんだったかがよくわかります。

 

4に日本の対応がかかれていますので翻訳しておきます。

2011年11月日本の原子力安全委員会はPAZを半径5キロ圏、UPZを30キロ圏、PPZ(プルーム・プロテクティブ・ゾーン:プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域)(屋内退避など)を50キロ圏と制定した。

 

PPZなるものが制定されていました。

PPZ=Plume Protective Zone

Webで検索したところ、原子力安全委員会の資料に「プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域」とありました。

参照:原子力発電所に係る防災対策を重点的に充実すべき地域に関する考え方について

50キロどころじゃないと思うんですけどねえ・・・。

 

最後に、IAEAの資料に「長期間防護行動区域」(LPZ:Longer Term Protective Action Zone)というものがあるということに注目して下さい。

日本ではおそらく一般的に知られていない概念ではないでしょうか。

原発先進国のフィンランド、ドイツでは、LPZを100キロとしています。

日本にもこのような区域が必要なのではないでしょうか。

 

 

よくわからない日本語 原子力災害の避難区域について EPZとは?

EPZについて、香港の原子力情報サイトを、わかりやすい日本語に翻訳したものを紹介しました。

一応ここでよくわからない日本語のEPZの説明も紹介しましょう。

 

原子力防災基礎用語集:防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ) より

防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ)

防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ:Emergency Planning Zone)とは、原子力施設からの放射性物質又は放射線の異常な放出を想定し、周辺環境への影響、周辺住民等の被ばくを低減するための防護措置を短期間に効率良く行うため、あらかじめ異常事態の発生を仮定し、施設の特性等を踏まえて、その影響の及ぶ可能性のある範囲を技術的見地から十分な余裕を持たせて定めた範囲をいう(原子力安全委員会の「原子力施設等の防災対策について」(防災指針)による)。

 

防災対策重点地域(EPZ) - 安全 | 電気事業連合会 より

防災対策重点地域(EPZ)Emergency Planning Zone

原子力施設の事故などを想定し、周辺住民の被ばくや放射性物質による汚染の影響を低減するため、影響の及ぶ可能性のある範囲を、あらかじめ技術的に起こりえない十分な余裕を持たせて定めた範囲。

原子力安全委員会はEPZを原子力施設から半径約8~10km圏内と定めていたが、福島第一原子力発電所の事故を受けて見直しが行われた。事故後、従来の EPZの範囲に入っていない周辺自治体からEPZの拡大や電力会社との定期的な協議を求める声が挙がったため、原子力安全委員会は2011年11月に改定案を提示した。

 

日本では以前はPAZとUPZがなかったので、EPZだけが実質的な原子力災害における防災区域となっていたようです。

 

混乱しますので、東電電事連への怒り以外は忘れてください。

 

 

 

 

 

 

原子力災害の避難区域について知っていますか? EPZとは?

実は私は先日まで避難区域についてまちがった認識をしていました。

こんな記載をみかけたことはありませんか?

UPZ = Urgent Protective action planning Zone  緊急防護措置計画範囲(5~30キロ)
EPZ = Emergency Planning Zone  防災対策重点地域の範囲(5~10キロ)
PAZ = Precautionary Action Zone  予防的措置範囲(~5キロ)

PAZは最近は一般に「即時避難区域」、UPZは「避難準備区域」と呼ばれています。

調べてみると、EPZは廃止になり、現在はUPZを採用することになった・・・という記載がされているものが散見されました。

ああ、そうなのか、広い範囲を採用することになったのね・・・と単純に考えていたのですが、英文の資料を読んでいてそれが間違いであることに気づきました。

正しくは、PAZとUPZをひっくるめた、防災区域がEPZと呼ばれる区域なのです。

日本語で記載されているものを読んでも、私にはさっぱりわかりませんでした。

役所の日本語って、なんてわかりにくいんでしょう!

実は私は香港の原子力情報サイトを読んでいて初めて理解しました。

英文と中文にもかかわらず、日本語よりわかりやすいというのはどういうことでしょう。

もう、笑うしかありません。

ここまでくると、故意にわかりにくい翻訳をしているのではないかと思ってしまいます。

 

というわけで、わかりやすい翻訳を掲載したいと思います。

DBCP-RADIATION AND NUCLEAR SAFETY-NUCLEAR EMERGENCY MANAGEMENT より

 

EPZとは何ですか?(中文では「緊急計画区」)
EPZとは原子力施設周辺の防災エリアです。
このエリアでは、事前に詳細な危機管理計画を策定・準備し、原発事故が発生した場合は、住民に適切な情報と防護措置を提供しなくてはなりません。

 

国際原子力機関IAEA)のEPZとはどんなものですか?
国際原子力機関は以下の種類のEPZを設定しています。
・PAZ(Precautionary Action Zone)(中文では「予防行動区」)
・UPZ(Urgent Protective Action Planning Zone)(中文では「緊急防護行動計画区」)

 

はい、よくわかりましたね!

 

EPZというのは原子力災害の防災エリアです。

原子力発電所における事故や災害に備えて、防災対策を適用する区域ということです。

 

次回は、PAZとUPZについても、こちらのサイトを参考にみていきたいと思います。

このサイトの記載は、IAEAの国際安全基準(IAEA Safety Standards)から参照、引用されています。

Arrangements for Preparedness for a Nuclear or Radiological Emergency, GS-G-2.1 (2007)

 

ちなみに私の翻訳は、中文メインで英文も一応確認しながら翻訳しています。

原発関連の専門用語が全くわからないので、英文だけだとうまく翻訳できないことが多く、中文をメインに翻訳しています。

もし、間違いやお気づきの点がありましたら、遠慮なくご指摘ください。

詳しく教えていただけるとありがたいです。

 

こんな単純明快なことなのに、どうして日本語のサイトの記載はわけがわからないものが多いのでしょうね。

 

参考までに、日本語サイトのURLをのせておきます。

読むと混乱するかもしれませんので、読まない方がいいかもしれません(笑)。

原子力防災基礎用語集:防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(EPZ)

防災対策重点地域(EPZ) - 安全 | 電気事業連合会